常套句
職場のグループホームで、入居されているお年寄りが、「腰が痛くて」とか、「つらい」とか、慢性的にかかえている体の不調を訴えるようなとき、黙っているよりましか、というくらいな気持ちで「生きている証拠ですよ」と答えている。
誰に教わったわけでもなく、はじめてそういう言葉が出てきたときは、自分の経験とか考えから生まれた何かだったろうけど、今ではカードとして常備されているような常套句のひとつになっている。
「人の気も知らないで」とか、憎まれ口が返ってくることもあるけど、それはそれで、前向きな反応と受けとることができる。
このあいだ、「歩くだけで息があがっちゃった」とおっしゃるおばあちゃんに、何気なくこの常套句を使ったところ、「やっと生きている証拠だね」と返された。その機知の働きに、人柄を感じる。
こういう事の積み重ねに、ちょっとした喜びを抱きつつ、介護職員として働いている。